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己の声は普通に喋っても、かなりドスが効いていると思うから、極力穏やかに言ったつもりだが、やはりこの場所には似つかわしくない。
「私、ですか・・・?」
小首を傾げる。
その動作にまで見惚れる自分は一体どうしたというのか。
「私は・・・。」
少女が何かを告げようとした時、バタバタと誰かが走ってくる音が聞こえてくる。
しまった、と思って逃げようとしたが手遅れだった。
「貴様!そこで何をしている!!」
聖騎士団の服を着ているから彼も団員だろう。結界の異常がばれたのだ。睨みつけるようにソルをみる。
「そこの男!ここは立ち入り禁止だと入団時に言われている筈だ!!どうやって入ってきた!!」
余程ここは立ち入ってはいけないところなのだろう。やってきた団員は支給された剣を抜いている。
(どうするか・・・。)
馬鹿正直に結界を解いたと言えばさらに事態はややこしくなる。かと言ってこれ以上ダンマリを続ければ自分の目的が果たせなくなる。
この状況を打開するためアレコレ考えていると、団員が徐々に近づいてくる。
その時。
「・・・待って下さい。アルク。」
少女が団員を引き留めた。
「彼は何も悪いことはしていません。私が・・・、私、話相手が欲しくて、つい結界を解いてしまったんです。彼を呼び寄せたのは私です。彼に非はありません。」
「しかし・・・。」
「彼は悪くありません。アルク、どうか・・・。」
「・・・。」
アルクと呼ばれた少年は、暫くした後、溜息をついて剣をしまった。
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