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「さて、そろそろ自分で飛んでもいい頃かね」
母が言った。飛ぶ?冗談はやめてもらいたいものだ
「どうやって飛ぶの?」
兄弟たちは無邪気にそんなことを訊いている。そんなことできるはずもないのに。
「背中の羽を広げて風を抱くようにすれば飛べるわ。やってみなさい」
言われてすぐに兄弟たちは羽をばたつかせ始めた。目が輝いている。
「あんたもやってみなさい」
優しい口調に私の心は痛んだ。怖いと言えるだろうか?
「ちょっと・・・・・・・」
「ん?」
「ちょっと調子が悪いから明日やりますよ」
言えなかった。
「・・・・・・・・・・そう」
なんとしてでもこの恐怖心をなくなさなければ。
「できたできた」
空を舞う兄弟たちを見てそう誓った。
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