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「実は、空を飛ぶように母に言われたんだが、私は正直言って高いところが怖い。空なんて想像しただけで震えが止まらなくなる。下を覗けば足がすくむ。兄弟たちはみんな練習を始めているし長い間ではないが飛んでいる。それなのに私だけは・・・・・・・・・」
「あははは」
このやろう。
ムッとした目で月を見る。
「いやぁ、悪い悪い。だがそれはなかなかにおもしろい」
「笑わない努力はしたのか?」
「するつもりではあったのだがな」
これから月を信用するのはやめよう。
「だが少し考えてみろ。坊やの背中には翼があるじゃないか。空を恐れて使わずにいたらもったいないとは思わないか?」
「そういう問題ではない。こんなものがあったところで私の心が空を拒絶するのだから飛ぶことなどできない」
「ほぉ、だが坊やのように全身が黒くて翼を持っているものたちはみな、空を飛ぶことで敵から身を守り、自らの食を得るのではないのか?飛べないとなると先は見えてしまう気がするが。現に坊やはその巣の中で圧倒的に小さいだろう。」
「・・・・・・・・・・・・」
月の言うことは確かに正しかった。私たちの種族は空を飛べなければ生きる術がないと言ってもいい。
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