『キス』

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くちびると、くちびるが、軽くふれるだけの、キスだった。 本当に、触れてたのか。 不安になるほど、一瞬で、 忘れられないほど、永遠だった。 もう一度、と欲したくなる気持ちと、 あまりに完璧でこれ以上のものなんてないという気持ちと。 ゆっくりと離れていく鈴が、私の視界の中で形を取り戻す。 言われなくても、望まれなくても、鈴を腕の中に取り戻した。 どうしよう。鈴のことが好きだ。 視界の中にいるだけじゃない鈴を知ってしまった。 この瞳の中に映らなくても、鈴を感じる術を知ってしまった。 怖かった。 鈴を感じることで、自分がいることを確認してた。 自分が崩れないように鈴にしがみついてるみたいだった。
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