熱病。

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  鞄一つ分の距離を隔てて、私たちは並んで歩く。 「おばさん、なんか言ってたの?」 「なんで?」 「心配するようなことはないって、リンが言ってるの聞こえたから」 「あ、うん。昨日塾休んじゃってね、で、勉強付いていけるかとかそーゆー話。」 本当のことを言って、ゆうくんがどうにか出来るわけじゃないから。仕方ない。 小さいころ、意味もなく、すずって名前をからかわれて以来、 私のことをリンって呼ぶ、世界にたった一人の人、ゆうくん。 「鈴のなまえ!ほかによみ方あるんだって!しらべたんだ! だからもう、鈴じゃないよ!リンって呼ぶからさ、だから落ち込むなよっ」 ゆうくんが名前を呼ぶたびに、優しい人だなって思い出す。 おっきな辞書を抱えて、走ってくるちっさなゆうくんを思い出す。 だから、「彼氏になりたい」って言われたとき、 「いいよ」と答えてしまった。 反対する理由を思いつかなかった。   守ってくれるタイプの男の子だから、 そういう人が彼氏になるもんだと思ったから。
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