『おはよう』

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  鈴が実在だって分かるのは、声が聞こえるから。 「おはよう」 「はぁっ、おはよう」 「そんな、走らなくてもよかったのに。変な桃ちゃん。」 「うん、ごめん、ふぅーっ」 「行こっ」 「うん」 二人並んだ腕が、制服越しに少しだけ当たる。 鈴が実在だって分かるのは、ふれることができるから。 「集中講座来なかったね」 「うん。昨日、ちょっと熱でちゃって」 「あ・・・それは・・・・。ごめん。」 「桃ちゃんが謝ることじゃないよ」 「いや・・でも・・・。うん。ごめん。」 鈴が実在だって確認しながら、一歩ずつあるく。 この一歩を歩くために、鈴の実在を確認してるのかもしれない。 確認しなきゃ歩けないのかもしれない。  
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