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クリスマスパーティーも無事終え、部屋に戻った槐。
時計を見れば、あと三十分で日付も変わろうとしていた。
槐はサイドテーブルの小さな引き出しから、紺色の包みを取り出す。
今日の為に、用意した物だ。
槐は微笑みを浮かべてそれを見、優しい手つきで持つ。
これを渡す相手の所へ、行こうとした時だった。
コンコン─────
急に扉がノックされ、驚いた槐は包みを咄嗟に後ろ手に隠した。
「はい。」
ガチャリ、と開けられる。
その向こうに立っていたのは見間違えることの無い人。
────────泪だ。
「槐、今良いかな?」
「えぇ、大丈夫ですよ。」
槐が返事をすると、少し安堵した表情の泪が部屋におずおずと入ってくる。
「お茶を淹れますね。」
泪をソファーに促し、槐はポットからお湯を注いで紅茶を淹れる。
泪が好んで飲むのはレモンティー。
二つのカップのうち、一つに輪切り檸檬が浮かんでいる。
「どうぞ。」
「有難う。」
窓の外はまだ雪が降っていた。
昼間出掛けた時よりもそれは積もり、そこから見える屋根も白に染まっていて銀世界を作り出す。
槐と泪はその景色を眺めながら、心を落ち着かせようと互いに必死だ。
クリスマスだと意識するからか、二人の鼓動はいつもより速くなっていた。
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