旅籠屋

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夜からずっと付けっぱなしだったテレビからは、新年の挨拶を述べるCMが続けて流れていた。 見慣れたそれに、振り返る者は誰も居ない。 それもその筈。 テレビが付いているリビングには誰の姿も無いのだ。 「エンジュ!お土産、楽しみにしてるねっ♪」 どこか嬉しそうな声が、エントランスに響いている。 「風令。何度も言いますが、キッチンの道具には触れないで下さいね?」 念を押すように風令に言っているのは、キャリーケースを持った槐。 その隣には勿論泪が。 同じようにキャリーケースを横に置いていた。 「槐、いくら風令さんが料理下手だからってそれは言い過ぎだよ。」 「ルイくん。それ、フォローになってないからね?」 ‥‥確かに。 「‥‥‥‥眠い。」 年明けは四人で迎えようと、昨晩から徹夜だったのだ。 暇さえあれば寝ているこの男、雷には徹夜など拷問のようだった。
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