降誕祭

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外が白に染まってきた。 屋敷の外壁を這っていた蔦(ツタ)も綿帽子を被り、景色の全てを純白に。 靴底が雪を圧縮して、ギュッ、と心地好い音が鳴った。 「積もってきたね。」 そして横からの落ち着く次低音。 薄い水色のマフラーを巻いた泪が、隣を歩く槐の顔を見て言った。 サーモンピンクのマフラーをしている槐は、目を細めて嬉しそうに笑う。 「えぇ。殆(ホトン)どの色が白に変わりましたね。」 それぞれマフラーとお揃いの色の手袋をした片手は、しっかりと繋がれている。 二人の心もそれに比例して、不安も何も無い。 それもその筈。 今日は、恋人たちにとって特別な日なのだ。 クリスマスという外国の行事でありながらも、人々の心は浮き足だっていた。 街もライトアップされ、道行く人達の足取りも軽く見える。  
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