最期に始める歩み

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向かい風が行く手を阻む。 もう家は目に見えているのに さっきから 全然進んでる気がしない 言うことを聞かないと 分かっていても 強い風が吹く度に止まって、と 思わずにはいられない。 勝手に涙が出てくる。 早く早く―――――――――! やっとの思いで重い扉を開けると スーツ姿の人が 目に飛び込んできた。 その人はゆっくり振り返ると 「―――――――もらえるかな」 と言った。 肩で息をしながら彼を見つめる。 もしかして待っていてくれたの? そう思うだけで 胸がいっぱいになって 涙が込み上げてくる。 私は満面の笑みで 「百合ですね!」 と答えた。 そんな私に 少し驚いたような顔を見せた後 須賀さんは小さく頷いた。
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