1滴

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    私にとって、この海は恋人のようなものだった。   ザザン…シュワ…   ザザンッ…シュワシュワ   柔らかい波の揺れが、白い泡を引き連れて足元を濡らす。     「…、ん」   足元に運ばれて来たのは白い泡だけでは無く、可愛らしい貝殻もだった。   フッと微笑んで、私はそっとしゃがみこんでそれを拾う。   小指の先程の小さな桃色の貝殻は、透明な水を弾いて、私の手のひらの中で太陽の光を反射して輝いていた。  
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