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壱
人で賑わう町。
店の前に立って客寄せする者や、急ぎ足で道を行く者。
世間話をする者や、刀を腰に携え堂々と歩いていく者。
そんな人々を眺めながら、一人の男は団子を頬張った。
「すみませーん、団子一串ー」
「こっちに二串追加ね」
「はいはーい」
お客の注文に笑顔で答える女の子。
男はそちらの方をちらりと見た。
「お雪ちゃーん、団子一串下さーい」
「あ、はい!」
お雪ちゃんと呼ばれた女の子が小走りで客に近付いていった。
と、その時。
ドンッ
「あっ…、すみませんっ!」
お雪が男にぶつかった。
「姉ちゃん、いてぇじゃねぇか」
ドスの聞いた声。
見ればどこぞの不良の輩達だ。
「本当にすみません、大丈夫でしたか?」
「大丈夫じゃねぇよ、汚れちまったじゃねぇか」
金出せよ、金。
男達がお雪に脅しをかけた。
他の客は怖がって息を飲みながら様子を見守っている。
ある者は勘定を払って、さっさと逃げていった。
「金払えねぇんなら俺らに付き合えよ」
一人の男がお雪の細い腕を掴んだ。
「おいおい、お雪ちゃんに何してんだ」
凜とした声と共に、お雪の腕を掴んでいた不良の手が捩上げられる。そして軽々と投げ飛ばされてしまった。
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