3人が本棚に入れています
本棚に追加
「桃四郎さん、平蔵さん!!」
野次馬が消え始めたころ、二人のもとにお雪が小走りでやってきた。
「おお、お雪ちゃん。怪我はなかったかい?」
桃四郎はヘラッと笑って手を挙げる。
「私は大丈夫です。でも桃四郎さんが……」
「なぁに、こんなの怪我の内にも入らねぇさ」
「駄目です!!ちゃんと手当てしないと!」
殴られた頬を撫でてから、桃四郎はお雪に背を向けた。
「俺を心配してくれるなんて、優しいねぇお雪ちゃんは…そんなところが、俺は大好きだ」
バッと振り返り、お雪を抱きしめようとしたが、その両手は空振りした。
「あれ?」と間抜けな声を上げる桃四郎。
姿を消していたお雪は、団子屋から救急箱を持ってくる。
「さあ、手当てしましょう」
「ははっ。そうだ、手当てついでに話でも聞かせてもらおうか」
倉昌は笑いながら片方の手をお雪の背に添え、もう片方の手で桃四郎の腕を掴むと団子屋へ入っていった。
.
最初のコメントを投稿しよう!