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「だーかーらー、俺はお雪ちゃんがあの不良達に絡まれてたから助けたの!悪いことなんて一つもしてねぇ!!」
「誰もお前を悪いなんて言ってねぇだろが」
「ただの事情聴取だ」と倉昌は呆れた顔をしてお茶を啜った。
「大体よ、お前もいい年なんだから、喧嘩ばっかしてないで定職に就いたらどうなんだ」
「い、いいだろ別に。俺は好きでこの生活してんだからっ!」
「フラフラしてると、そのうちお雪ちゃんに愛想尽かされるんじゃねぇか?」
「うッ……!」
倉昌の言葉に、桃四郎は顔を真っ青にする。
その様子を見た倉昌はふッと笑った。
「…ま、そこがお前の良いところなのかも知れんがな」
お茶をグイッと飲み干すと、倉昌が急に真顔になり、桃四郎を見た。
「お前…戻らねぇのか?」
「何処に」
「将軍のとこに、さ」
すると桃四郎は眉間に皺を寄せ、倉昌を睨んだ。
しかし倉昌は動じる事なく、逆に桃四郎を挑発するように見詰める。
「…戻らねぇさ」
暫く黙った後、先に口を開いたのは桃四郎だった。
桃四郎は遠くの景色を見て、穏やかな声で呟いた。
「あそこには…幕府には俺の居場所はない。俺が戻る資格はない」
俺は、『あいつ』の側にいない方が良いんだ
桃四郎は淋しそうな瞳で、流れゆく雲を眺めていた。
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