都合の良い女

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突き刺さる言葉が自業自得だと言う事は解ってる。 だけど決めていた事があるの。 私は今まで散々彼に心配を掛け、泣かして来た。 苦しめて来た。 きっと彼が私の元から去らないのは、私が死にたがりだから。 それに、優しい彼に、私は甘えて来た。 だから次、彼を苦しめたら解放してあげるつもりだった、私から。 もう私には誰もいない。 婚姻届と共に渡された記入済みの離婚届。 その二枚は彼からのラブレターであり、プロポーズだった。 同じ名字になって、何が変わる訳でも無かったが、それでも満ち溢れていた、幸せで。 私はラブレターに記入し、市役所に出掛ける。 行く途中で、私名義の銀行から全てお金を引き下ろした。 それをある人物に託し、再び市役所へ向かう。 最後位、彼に幸せをプレゼントしたい。 私が貰った幸せには遠く及ばないとしても……。 その為に二年間、私は彼を泣かさないように生きて来たのだから。 その二年も先月、終わりを迎えた。 私は笑顔で市役所に足を踏み入れる。 どうか彼に幸せだけが降り注ぐよう、願いながら。  
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