都合の良い女

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女性は冷静に話始めた。 二ヶ月前に離婚届が受理されている事。 保険の手続きの性で連絡が二ヶ月遅れた事。 私の抱えていた借金が全て無くなった事。 私には全ての事が繋がらないで居る。 「私の依頼者は貴方の元奥様です。そしてこれを渡すよう、預かって参りました」 差し出されたのは彼女がいつも身に付けていたネックレスだった。 そしてそのネックレスに付いてある鍵こそ、彼女が残した箱の鍵。 「あの、彼女は……」 「自殺されました」 「え……?」 「二ヶ月前に、離婚届を出したその足で、自殺されたそうです。私は遺言を実行するよう依頼された弁護士です」 頭が真っ白になった。 理解出来ない。 否、理解したくない。 「葬儀は……」 「依頼者の遺言により、無縁仏として葬儀はせず、市が管理する墓地に埋葬されました」 重い沈黙が流れる。 「私が依頼されたのはここまでです」 女性は立ち上がり、呆然とする私へ一礼した。 「ですからここからは私個人の言葉として御受け取り下さい」 「……」 見上げた先に居る女性は、今にも泣きそうな顔をしていた。  
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