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「彼女は二年前からこの遺言を作成していました」
「二年前から……」
「そう、二年です。その二年が何を表すか、解りますか?」
「……いえ」
「保険会社により、契約してから二年立たないと保険金が降りないものがあります」
女性は苦虫を噛み潰したように言葉を吐き出した。
「自殺です」
「………」
「その保険金の一部がこちらです」
テーブルに置かれた分厚い茶封筒。
「貴方の借金を全て返済し、残った金額です」
そしてこう続けた。
「彼女の遺骨は遺言により、貴方にお渡しする事は私は出来ません。彼女はこれが最初で最後の貴方へのプレゼントだと言っていました。そして縛り付けていてごめんなさい、と……」
女性はそう残し、涙を滲ませながら出ていった。
部屋には私一人。
余りにも突然の事過ぎて、今にも心は爆発しそうな程に悲しいのに、何故か涙は流れなかった。
彼女の形見であるネックレスから鍵を取りに、全ての原因となった箱を開けた。
中に入っていたのは卑猥な玩具と、彼女のランプがピカピカと光る、携帯電話。
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