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そっと携帯を手に取り、中を見た。
メール受信フォルダは私のメールだらけで、全て保護されていた。
思い浮かんだのは、いつも携帯を幸せそうに見詰める貴女の横顔。
そして次に思い出したのは、自分の本当の願い事を決して口にしなかった貴女の事。
まだ付き合っていた時、私は彼女に何か言わなかったか、性に関する事で……。
殺してやりたくなった自分を。
『子どもは欲しいとは思えません。それに私は渇れてますから……』
『いつか子どもが欲しいと思えたら良いね』
『……貴女と心の繋がりがあれば私は充分です』
だから彼女は何も言わなかったのだ。
私は見て見ぬふりをして来たのだ。
ピルを飲む彼女の後ろ姿を。
箱を抱えて自室に戻る、彼女の横顔を。
おやすみなさいと言う、彼女の笑顔を……。
そっと玩具を手に取った。
彼女が望むものは全て与えようと思っていた。
彼女に苦労はさせないと誓っていた。
なのにこの結果はどうだ……?
そっと舌を伸ばし、玩具に触れる。
彼女の涙の味がした……。
END.
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