紅魔郷の10年くらい前

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「うう……」 全く予期していなかった上からの不意打ちに為す術なく気絶した美鈴が再び気付いたのは、それから5分ほど経ってからの事だった。 「ええと……確か女の子が空から降って……?」 痛む額を押さえながら状況を整理していく美鈴。そうして、自分が少女を抱えていた事を思い出す。 「うーん……てことはこの子は迷い込んできちゃったのかな」 迷い込む、というのは、幻想郷の外から中に入り込んでしまう、ということである。 本来ならその二つは結界で遮られていて行き来は不可能なのだが、稀に結界がほつれ、そこから人や物が移ってしまうことがある。 美鈴は、この少女もその被害者なのでは、と推測した。 「親ともはぐれちゃったのかな……可哀想に」 少女は見たところ十歳くらいで、銀色の髪をしていた。 「綺麗な髪。西洋人ではなさそうだけど……あら?」 と、そこで美鈴は少女が何かを持っているのに気付く。 「これは……懐中時計?」 なんだろう、大切な物なのかな……、と考え、そして思考を切り替える。 「っと、それより早くお嬢様に報告しなくちゃ」 そう言って、美鈴は少女を抱えて館へと走っていった。
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