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『さあ!行くぞ。ここに居る者は皆俺についてこい!
急ぐぞ』
『オーッ!!』
いつの間にか、土方さんの後ろには馬に乗った多くの兵が列を作っていた。
「ヒヒ―――ンッ!」
兵の気合いの声とともに、馬の鳴き声とともに私達は前に歩み始めた。
パカッ パカッ
やはり馬に乗るのは怖い。
土方さんの腰に捕まり、バランスを取るのが今の私にはやっとだった。
そんな時―――
『
だいぶ慣れてきたみてぇだな』
『………え?』
『馬だよ。馬。
初めて乗るにしちァ上出来じゃねぇか。
やはり俺の馬の扱いが上手いのかな…ククッ』
私は正直驚いた。
初めて…彼が冗談混じりで私に笑いかけてくれている。
緊張を解すためなのか、戦場の恐ろしさを柔らげるためなのかは分からない。
勿論、顔は見えない。
だけど、私にはわかる。土方さん…
今。笑ってる。
私は彼のそんな顔を見たくてしょうがなかったがそんな想いは胸にそっと秘めた。
『フフッ。そうですね…!
あなたの腕が上手いんでしょう』
『……………』
私が答えると、またしばしの沈黙。
彼は今いったい何を考えている?
嗚呼、私あなたが気になって仕方がない。
パカッ
パカッ
こんな時にこの状況で不謹慎だと思ったが、私は鼓動を高まるのを抑えることができそうになかった。
見ず知らずの私に優しくしてくれた
土方さん
どんな形でもいい
私は土方さんの力になりたい
私は先程頭に浮かんだことを、思い切って口に出してみることにしてみた。
『土方さん。短銃を…
私に一丁貸して頂けませんか?』
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