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『ごめんなさい!
私…銃なら敵を殺せると思って
…どんな形でも、見ず知らずの私を助けてくれたあなた達の力になりたいと思ったんです。
ごめんなさい…ごめんなさい』
『……………』
また土方さんからの返事が無くなった。
銃を一丁頂けないでしょうか?
なんて出過ぎた真似をしなければ良かった。
『…確かに。
銃なら簡単に人を死にやることができる。
たった一瞬の一発で。
全てを無にできる』
『こちらに来てから、いったい…この手で何人の人を殺したのだろう。
もう無くなってきてしまった』
土方さんの声が微かに震えているのが分かった。
私はただ黙って土方さんの言葉に耳を傾ける。
『人を殺める感覚というものが。
不思議だな…
京で刀を奮っていたときは、必ずといっていい程罪悪感が俺を蝕んだ。
その罪のおかげで俺は人で居られたんだ。
だが、今はもう何も感じない。
殺らなければ殺られてしまう。
仲間を守るために浸すら銃を奮う。
俺は少なからず、奴等(新政府軍)が憎くて仕方ないみてぇだ。
あの平穏な時を、近藤さんを――
そして刀までをも俺達から奪っていったのだから。
』
胸がしめつけられる想いだった。
銃は感覚を鈍らせる。
戦場で使う度に、人の命の重さが分からなくなる。
だけれども、銃を使わなければ新政府に勝つことはできない。近代兵器を使用してきたのも全て新政府。
刀は……奪われた。
何故だか、土方さんの苦しい想いが手に取る様に分かった。
私に銃を使わせたくない理由。
それは……私に人の命の重さを忘れて欲しくはないから。
自分と同じ道を辿って欲しくはないから。
だけど、違う。
どんなに血で汚れようとも、
あなたは……
人の心の痛みを忘れてはいない。
『あなたは…“人”です。
人の命の重さを分かってらっしゃる。
見ず知らずの私を助けてくれた優しい、優しい人です…』
あまりにも消えそうな声で呟くあなた。
知らずに、私は土方さんの背に頬を近づけていた。
あなたは決して憎しみで汚れてなんかいない。
志を忘れてはいない。
忘れないで。
あなたは一人じゃない。
皆があなたを慕っている。
皆があなたを必要としている。
私もあなたの近くにいる。
私はその想いを体で伝えるかの如く、ギュッと強く土方さんの腰を掴んだ。
『………あ…』
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