五稜郭

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やっとおさまったか…… と思い、耳から両手を離しゆっくりとその場に立ち上がる。 私は辺りを見渡した。 『…え……?』 私は目を疑った。 さっきまで五稜郭タワーにいて…… 上から五稜郭を眺めていた。 そして、周りには賑やかな観光客や展示物、土方さんの銅像があったはずだった。 それなのに私が今いる場所は………。 ドーンッ。 私が唖然としていると 『………!! キャーッ!!!』 激しい砲撃の音が耳に鳴り響き、私は思わずその場に屈み込んで叫んでしまった。 『撃てーっ!! 新政府軍め!! 反撃だ!! 撃て!』 ドーンッ。ドーンッ。 いったい何がどうなっているの? 私はさっきまで五稜郭にいた。 いたはずなのに…… これは夢? 夢をみているんだ。 私は悪い夢を見ているんだと自分に言い聞かせた。 バァーンッ!!!! 激しい砲撃の音が近くで感じられたと思った直後だった。 『ウワアアァーッ!!!』 『ギャーッ!』 苦しそうなうめき声がした方に目をやると、 さっきまで撃てと指揮していた男や近くにいた兵等の体からは血が吹き出し、私の前で肉片が飛び散った。 私は目を見開いた。 目の前で起きていることが何かわからなかった。 『ウッ………ゲェッ』 私を激しい吐き気が襲った。 目の前で人が飛び散るなんて… 信じられなかった。残忍で気持ち悪い光景が私の中で何度もフラッシュバッグしていた。 かえりたい これが悪い夢ならば私をここから帰らせて…… 私は近くにある木に寄り掛かり、虚ろな目で辺りを見渡していた。 そしてあることに気がついた。 『ここ……さっき見てきた五稜郭と形も全部一緒だ。そしてさっき砲撃を受けたのは五稜郭の土塁。 まさか………… 私が明治ニ年の五稜郭にいるとゆうこと?』
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