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そんな…。
信じられない。
もしかしてこれは私がさっきみていたフィギュアの時代(トキ)。
箱館総攻撃の日ってこと?
『お前……何者だ?
その服…髪色………異人か?
なにより女がこんなときにこんなところにいるなど、馬鹿げている。
』
気がつくと私の首には冷たい刃がむけられていた。
ドクンッ。ドクンッ
心臓が破裂しそうだった。
あと数センチで私は首を切られる。
額から脂汗が滲み出た。
その時……
『おいっ!大野!
何をしている?俺達にもはや時間はないのだぞ。』
『こんなところに女子が……』
『女だと……?』
目があった瞬間。
私は彼だと分かった。
そう。ずっと憧れていたあの人。
あなたのように生きたいとずっと思っていた。
土方歳三。
彼は私の目を真っすぐに見つめた。
この時、私には鳴り響く砲撃の音も人の叫び声も聞こえなかった。
時が止まったような感じがした。
『お前………まあいい。 』
彼は一瞬目を見開いた後、私に冷たい視線を投げ付け
『ここに居たら死ぬ。
死にたくなければついてこい。死にたければそのままそこにいろ。』
とつぶやいた。
『大野!先程箱館が危ういという連絡が入った。
額兵隊を率いて急いであちらに向かうぞ!
あいつらに箱館を渡してたまるものか……ッ』
『はいっ!皆いくぞ』
大野という人物は大きな声で叫んだ。
私はどうすることもできずにその場にうずくまっていただけだった。
ここに居たら死ぬ。
確かにそうだ。
だけどどうすればいいのかわからない。私は今まだこの状況を理解できていなかった。
『女ッ!
早くしろ!!!』
私がうだうだしていると土方さんは私に叫んだ。
『俺の後ろに乗れ……
閑門につくまでは何があっても俺の腰から手を離すんじゃねぇぞ。』
『………は……い』
私は今だに自分が明治ニ年の箱館にいることが信じられずにいたが、彼の腰に捕まり、走りながら遠いような近いような海で激しい砲撃戦が繰り広げられているのを見て………
ここが明治二年の箱館戦争最期の決戦の地であることを改めて思い知らされた。
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