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『私は西暦2008年の五稜郭にいました。なのに……気づいたら私はここに居た。何がどうなっているのか自分でもわからない。』
私は不安でたまらなかった。
これから自分がどうなるのか。
元の時代に帰れるのか。
『…………』
すると、何故か私の一言に彼は黙ってしまった。
『西暦2008年……か。
想像できないな。
いったい日本はどうなっているんだろうか…』
ヒヒーンッ。
土方さんは紐を引いて馬をその場に止まらせると、身軽に馬から降りた。
するとすぐに私を見て
『ほらっ。手を貸してやるから早く降りろ…』
と手を差し延べてくれた。
『ありがとうございます…。』
辺りを見回すと、向こうから傷ついた兵士達がやってくるのが見えた。
中には頭から血を流している者や足をひきずりながら歩いている者もいた。
土方さんと大野という人物はその人達のところに走り寄った。
『伝習士官隊がここに逃げてきたということは…』
『すみません。土方総督…ッ。
箱館山から進撃してきた新政府軍に、ついに箱館市街まで奪われました。』
『糞ッ……!
大野!!
お前に頼みがある。お前にしかできないことだ。』
『はっ。』
『今からお前を先頭に、伝習士官隊とこの額兵隊を率いて市中に突撃しろ。
まだ間に合うかもしれない。』
『わかりました。
この大野右仲。必ず市中は奪還してみせます。
行くぞ!!!お前等!!!新政府軍に俺等の底力見せてやろう。』
『おーっ!!!!!!』
大野は兵を率いて北へと進撃していった。
――――あちこちで人の叫び声とともに砲撃の音、連発される銃声が聞こえる。
ツンと鼻を刺すような独特な火薬の匂い。
私今戦場にいる。
箱館戦争最期の地にいる。
これは紛れも無い事実だ。
私が辺りを見渡してそんなことを考えていると、遠くから馬に乗ってきた兵がやってきた。
土方さんの元に新たな伝令が届いたのだ。
『ハァハァ……土方さんッ!!!』
『何だ?
何があった?』
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