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ジリリリリ、と。
けたたましい音で目覚ましが鳴り、俺の意識を夢の世界から現実世界へと強引に引き戻す。
ベッドの上。
ぐちゃぐちゃになり、床に半分落ちた毛布。
ボサボサの、寝癖だらけの黒髪。
見慣れた天井を見上げる。
朝がやって来た。
俺は眠気を振り払い、ベッドから身体を起こした。
同時、身体中がポキポキと嫌な音を立てる。
……疲れがたまっているな。大分無茶を続けたせいかもしれない。
廊下にある洗面台で顔を洗いつつ、鬱々とした気分に。
顔を振って、それを振り払う。
なに、辛いのは俺一人じゃない。
今更、いちいち弱音なんて吐いていられるか。
「あ、りゅーちゃん。おはよー」
「おはよ、姉ちゃん」
俺の部屋の向かいの部屋から、眠たげに垂れ下がった瞼を擦りながら姉の美未(みみ)が出てきた。
俺は歯ブラシを口内に突っ込みながら挨拶をする。
俺の唯一の姉弟だ。
「母さんは?まだ寝てるよね?」
「うん」
「そっか。なら、よし」
言って、姉ちゃんは俺の隣に立ち、ピンク色の歯ブラシを洗面台から手に取った。
俺達の部屋は二階。
母さんは、一階の自室で熟睡している。
父さんは、この家にはいない。
これがこの俺、御劔 龍一(みつるぎ りゅういち)を取り囲む環境であった。
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