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「出来たー?」
俺がフライパン片手に、現代を生きる高校生らしい至極真っ当に真っ暗な思考を頭に巡らせていた丁度その時、背後から階段を降りる音と共に、姉ちゃんの能天気な声が聞こえた。
「まだだよ。生焼けでいいなら、渡すけど」
「半熟でよろしく頼みます、りゅーちゃん」
「あいよ」
ハムをいれ、ウィンナーを入れ、卵を二つ入れ、食パンはレンジに入れ――、とりあえず俺の料理は入れるだけ。否、料理と呼んでいいものか。
まあ、食べられるんだから料理でいいだろう。細かいことは気にしない。
ハムエッグのウィンナー添え。食パン付き、なんて名前が付けられそうな料理だが、俺にはこんなもんしか作れない。
まあチャーハンくらいなら作れるけども、それでも人並みかそれ以下。
正直な話、料理は姉ちゃんのが上手いわけで、姉ちゃんが作ってくれればいいのだが、割とものぐさな彼女は積極的に家事をしたがらない。
勿論、最低限のことはするし、むしろ、こちらが手の空いていない時はどんどん協力してくれる。
――互いが互いを、思いやるべし。
ただ、あくまで『したがらない』。
自分から『料理をすると言うポジションに付く』ことはしないのだ。
つまり、俺が料理を作ると言えば、素直に従うし、俺が作れる状況でなければ彼女が作る。
勿論、俺も彼女の方が得意だからと行って、彼女に料理の役目を全部押し付けようとは思わない。
別段、彼女は料理を作ること自体を好んでいないのを知っているからだ。
――互いが互いを、思いやるべし。
「いただきます」
そうこうしている内に俺の料理もどきは完成し、俺と姉ちゃんは向かい合って席に着き、朝食を開始した。
「美味しい」
「どうも」
姉ちゃんは必ず開口一番、そう言う。
俺もそれに、『どうも』と返す。
姉ちゃんが作った時は、その逆。
――互いが互いを、思いやるべし。
――ああ。
歪んでやがる。
俺は不幸だ。
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