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――そして、その日から俺達三人の生活が始まった。
苦労は色々とあった。色々ありすぎて、ここで語るには時間が足らない。
否、語るまでも無く、いずれはわかることだ。
苦労は今も昔も変わらず、続いている。
そう、俺は不幸だ。
不幸ゆえに、苦労ゆえに、俺たちは、俺とねーちゃんは『互いが互いを思いやらなければならない』。
母さんに少しでも楽をしてもらいたいから、母さんに少しでも心配をかけたくないから。
俺たちは結束し、これ以上の問題ごとを持ち込んではならないのだ。
そして、他人に関してもそう。
無警戒に関係を持って、知らぬ間に厄介ごとを持ち込まれても、巻き込まれても、困る。
だから、極力深い関係は避け、ただ話し友達になるだけでも、まずは相手の素性をある程度把握してから――、と言うのは、俺と姉ちゃんの暗黙のルールであった。
「転校生」
「ん?」
「良い子だといいわね」
姉ちゃんはフッと小さく笑って、そう口にした。
「関係ねえよ」
だけどそれに対し、俺は表情を変えないまま、呟くだけ。
「どんな奴だろうと、俺の、俺たちのセカイには、何の影響も、変化も、与えられない」
「……」
返答は無い。
ただ姉ちゃんが俺に向ける視線は、決して気持ちのいいものではなくて。
若干の心配と――、僅かな恐怖を、内包していたように思う。
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