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私は息を吸い込み、努めて冷静に告げた 「私は…真由を、生き返らせる」 親友を、取り戻すために。 大切なものが戻るかもしれない希望 苦しみを味わうことになるかもしれない恐怖 二つの気持ちがある でも、真由のことを思うと 希望の方が大きかった。 私の返答に、蜘蛛が答える 《ソノ為ニハ何ヲスルコトモ、イトワヌカ》 何を犠牲にしても、構わないのか 「…真由の為なら」 すべては真由 たった1人の為に。 《ヨカロウ。ソノ言質、忘レルナ。》 その言葉と同時に、世界が再びゆがみだす その歪みに、私は思わず膝をついた 感覚がついていかない ぐらつく…。 みるみる変わってゆく紅は、少しずつ元の部屋を形作る 朦朧としはじめる意識 そんな中、私はぼんやりと聞いていた 《我ハ蜘蛛。汝と、絶ツコトノナキ契約ヲ…》 うっすらとした蜘蛛の声 徐々に弱くなっていくそれに耳を傾けながら、私は静かに目を閉じた 最後に耳をついたのは 《蜘蛛ハ決シテ、汝ヲ逃ガサナイ》 何故かそれだけは、はっきりと、確かに 聞こえた……。 蜘蛛。 結んだ契約。 私はこのときから 蜘蛛の糸に、捕らわれた まるで、 逃げることのできない 蝶のように……――。
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