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次第に近づき、向かってくる者が男――年は三十歳前後だろうか――だと認識できた。
すれ違いざま向こうから声を掛けられた、というより一方的に喋りだした。
「君はいったい何者だね? 自分の存在をどう捉えている? 人間だと本当に証明出来るかい?
感情があるから、根本的な姿形が他の人々と同じだから人間だというのかね?
超高度な複雑思考力、空間把握能力などを有したロボットかもしれない。
私たち人というのはそう考え始めると泥沼の世界に溺れてしまうものだ。
もし君が人なら目の前で溺れる人を見捨てたりはしない。私を助けるはずだ。
一刻も早くこの泥沼から引き上げてくれ、頼むから……」
突然そう告白してきた男。
光に包まれ目醒めたあと、初めて出会う人は必ずそうだ。
老若男女問わず誰もが僕に言葉を投げ掛ける。
それに対して僕は考えない。その瞬間に思ったことを言うだけだ。
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