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ガタゴトと揺れている。腕を枕代わりにして窓に寄り掛かり、うとうととしていた。
寝呆け眼をこすり、目を窓の外に向ける。外には黒い森と雲一つない青空が広がっていた。
流れる景色に見覚えは無い。
車内に目を戻すと向かいの席に四十才ぐらいの男が、深々と帽子を被り、腕を組んで寝ていた。
起こさないよう気を付けながら立ち上がり、トイレに向かった。
用を足し、戻ってくると男は目を醒まし窓の外を虚ろに見つめていた。
邪魔にならないよう通路側の席に静かに腰を下ろし、なんの気なしに車内を見渡した。僕と男以外に誰も居ないようだ。
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