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『これ少ないけど…いつか渡せたらなって。』
猛は茶封筒を荘司に手渡した。
『お金?…どうして。』
『そんな格好で故郷の地を踏めないだろ?帰り際にデパートでも寄って服の一枚でも新調しなよ。』
『先生ッ…あんがと、遠慮なく貰っとく。』
荘司はエヘッと鼻をかくと猛に一礼をした。
『さ、帰って支度しなよ。そして今夜中に発つんだよ。』
猛は荘司の肩を叩くと笑いながらその場で別れようとした次の瞬間荘司の顔色が豹変した事に気付いた!猛が慌てて振り向くとそこには荘司に拳銃を構えたあの黒い服の男が仁王立ちしていた!
『!ッッ、や、安岡ッッ!』
『フヘヘ…やっと見つけたぜ糞野郎ッッ!』
安岡という黒服の男はゆっくりと荘司と猛の側に近寄った。
『やっぱりツルンでたのか先生よッッくくっ…』
『拳銃を捨てなさい…』
猛は冷静に冷静にと自分に言い聞かせながら安岡を睨み付けた。
『うるせぇ、アンタには関係ねぇ!これはコイツと組のメンツの問題だッッ!』
『安岡貴様ァ~!』
『っと動くなよ犬飼…てめぇはじっくりいたぶった後で脳天ぶち抜いてやる!』
ガァ~ン!
一発の銃弾が荘司の左手に命中した!
『!ッッ、グッ…ウガァ』
『やッ、やめるんだッッ!』
次の瞬間荘司の身体が覆いかぶさるように安岡の上に乗っかかっていた!
『荘司君やめろッッ!』
『くッ、来るな先生ッ、巻き添え食っちまう!』
安岡と荘司は激しくとっ組み合いながら河原の坂道を転がった!
『荘司君ッッ!』
猛の脳裏にさっき浮かべた最悪のシナリオが甦った。
(返り討ち…まッ、マズイ!安岡の寿命数字が本当だとしたらそれは荘司君自らがッッ!)
猛もやめろと叫びながら滑り落ちるように河原の坂道を下り降りた。
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