〓4畳半のヒットマン〓

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『せッッ…先生チキショォォォォォ~!』 荘司は震える手で拳銃を掴み直すと川面に向かって思い切り投げその軌道はチャポンと虚しく軽い音がした。 『クッ…ウグガァッッ!』 荘司は拳を地面に叩きつけながら何度も泣きわめいた。騒ぎを聞き付け近所の住民が警察を呼んだらしく数人の警察官が安岡と荘司の身柄を拘束した。 『驚いた…こいつは強盗恐喝で全国指名手配犯の安岡洋次だ…』 安岡は観念したかのように素直に警察官の連行に応じた。荘司も事情を聞く為に警察官に連行された。 『先生…全部こいつの、安岡の仕業だったんだ…組の金くすねて人の女にも手出してボロ雑巾のようにされて…俺に濡れ衣着せるような真似しやがったから俺コイツだけは…コイツだけは許せなかった。』 荘司の悲痛な叫びを聞いた後貴方もご同行願えますかと警察官に促され猛もパトカーに向かった。 『彼は…あの若者は…』 『あ、組員の犬飼荘司ですか…彼は余罪もありませんしおそらくすぐに釈放されるかと。』 『そうですか、よかった…』 猛は向かいのパトカーに乗り込む犬飼荘司の姿を眺めていた。 『先生ッッ!最後に一言ッッ!』 パトカーから顔を覗かせ荘司が叫んだ。 『ん?何だい?』 『あと5年…何が出来るか解んないけど…だけど俺母ちゃんの側にずっといるぜッッ!最期は母ちゃんの膝枕で死にてぇし!ありがとな先生ッッ、俺の辛い過去だけを《殺して》くれて…本当にありがとう!』 荘司の乗せたパトカーは暮れ始めた夕闇に消えて行った。 (荘司君…君は短いけど誰よりもきっと素晴らしい人生を送るよ。僕が保証する!) 猛は微笑みながらパトカーに乗ろうとした瞬間後ろのパトカーから警察官の叫び声が響いた! 『どうしたッ!』 『安岡が…安岡洋次が舌を噛み切って今…』 猛は静かに目を閉じた。
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