〓鏡の中の藤谷若菜〓

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『あの高橋先生…』 『あ…はい?』 猛がまた来ますとエレベーターに乗り込んだ時、穂乃が思わず口をついた。 『……はい、何か…』 『……折り入ってご相談したい事が。』 『私…にでしょうか?』 猛は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔になった。 『…先生のお仕事の都合がつく日で構いませんので一度お会いして頂けますか?これ私の携帯電話番号です。』 『はぁ……いいですけど…』 急に心痛な面持ちになった穂乃を見て猛は何故か妙な胸騒ぎを覚えた。穂乃はではよろしくお願いしますと頭を下げ店の闇に消えて行った。 (穂乃さんが僕に相談…一体何なんだろう。) エレベーターのランプがカウントダウンする間猛はじっと考えれるだけの心当たりを考えていたがいっこうに結論には達しなかった。電車を待つ間も猛は穂乃の最後の淋しげな顔が気になっていた。帰り電車の社内で5人程の額に寿命数字が現れ、しかもその中の一人が【17】というヘビィな数字にもかかわらず猛は全くもってその事には動揺はしなかった。 (逢ってるんだ…何処かで確かに…アァ~けど思い出せないッ、ここまで出て来てるのにッッ!) 猛は苦虫をかみつぶしたような顔で真っ暗な電車の窓に写る自分の姿を見つめていた。
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