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(あたたかい!? まるで体温でもあるみたいだ……………)
しかし、ここでゆっくり考えている時間などあるはずもない。
カインはもう一度“紅人形”を掴むと、自分の肩へと担ぎ上げた。
すると、会場横にある窓へ軽々と飛び乗った。
「作戦完了。“紅人形”確かにいただいていく」
もちろん聞いている人がいるわけではないが、カインは右手の人差し指と中指を額に当てると軽く前へ突き出した。
そして開いていた窓から、まるで飛んでいるかのように足を踏み出す。
トン………
外はきれいに整備された芝が広がっている。
会場の混乱とは打って変わって、ここはシーンと静まり返っていた。
それもそのはず。
突然の停電の原因を探すため、警備の者もすべて借り出されていたのだから。
カインは肩に担いだ“紅人形”を担ぎ直し、月に照らされたオークション会場を背に静かに走り出したのだった。
一方、カインが会場を後にして数分後。
オークション会場ではようやく明かりが復旧していた。
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