闇オークション

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沸き上がる会場。 ガラスケースの中には腰までまっすぐに伸びた紅い髪を持ち、足の先まですっぽりと隠してしまう紅いドレスを纏っている、少女とも女性ともいえる一体の人形が収まっていた。 紅い瞳はただ一点のみを見つめているようであり、少し開いた紅い唇は今にもなにかを語り出しそうである。 まさにそれは“紅人形”と呼ばれるに相応しいものだった。 先程まで沸き立っていた会場からは一変、驚嘆の声が漏れはじめる。 「…………しかし、本当に人形か?」 カインが思わず口にしてしまうほど美しい人形。 まるで、今にも動き出しそうな人形。 いや、人間のよう………。 「お前知らないのか?あれは人形じゃなくて、生きてる人間だってもっぱらの噂だぜ。それにしても、本当に綺麗だよな~。どうやって人間を人形にするんだろうな?」 隣にいた中年の男が、一人でベラベラと話し始めた。 カインは相槌も打たず、男が話す言葉に耳を傾けた。 「見た所、17、8歳といったところか。あんな美人がずっととなりにいてくれるのを想像すると……………くぅっ、たまらんね!」 カインは再び、舞台の上の“紅人形”に目をやった。
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