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「は…?最後の別れ…?」
30秒ほど間が開いて龍ヶ崎くんの口が開いた。
「うん。引っ越すんだ」
「引っ越し?」
私は目を丸くした。
素直に驚いた。
「俺達はもう付き合ってない。でも、お互いメールアドレスは携帯から消してないだろ?だから…メールアドレスも此処での思い出も…全て消そうと思って…」
「……」
再び場が沈黙した。
「三谷。携帯貸して…」
真剣な眼差しで言われたので、私はすんなりと携帯を手渡した。
「ありがとう…。」
龍ヶ崎くんは寂しそうに笑みをこぼすと、私の携帯のデータフォルダから付き合っていた頃のフォトやムービーを消した。
「ねぇ。なんで引っ越すの?」
場の空気を壊すように私は問い掛けた。
「親父の会社が倒産したから…」
尚も悲しそうに話す。
データを消す龍ヶ崎くんの指が震えているのが分かった。
これ以上詮索してはならない。
そう直感した。
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