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「あたし、このエリアがいい!!」
幸紀が差したエリアは、澤井さんが地図に書いた三つの大きな丸の真ん中の所だった。
「よし、じゃぁ幸紀ちゃんがそこに決定ね。純、お前はどうする?」
「んじゃ、俺は右の方」
「そんじゃ俺が左か」
これで行くエリアは決めた。後は集まる時間と場所だ。
「集まる場所は、パトカーのあるここにしよう。時間は―――……」
澤井さんは時計を見る。
「五時だ」
ちょっと間をあけて澤井さんが言った。
「五時にここに戻って来ればいいんですね?」
幸紀が確認のためにもう一度聞いた。
「あぁ、そうだ。そんじゃ行くぞ」
澤井さんがそう言うと、三人は三方に分かれ自分のエリアへと向かった。
―――幸紀は、自分で選んだ真ん中のエリアへと来た。
「あんま変わんないな~」
幸紀はそんなことを口走りながらも、人を見かけると必ず声をかけた。
また一人、幸紀の前に歩いている人がいた。幸紀は声をかける。
「あの~、すみません。ちょっとお時間よろしいですか?」
話しかけたのは、60歳近くのおばあちゃんだ。
「……」
おばあちゃんは聞こえていないのか、幸紀の横を通り過ぎようとした。
「あの!!」
幸紀は先ほどよりもゆっくりと大きな声でおばあちゃんに話しかける。
「……はい?……あたしに何か用かのぉ?」
今度はおばあちゃんに聞こえたみたいだ。
「はい!!そうですよ!」
幸紀は先ほどと同じ早さでそこまでいい、一旦話をきり、咲矢の写真を取り出した。
そしてまた話を再開する。
「この!顔は知りませんか!!?」
「……どうかのぉ。見た覚えはないがのぉ」
幸紀はこの言葉を聞き、ガッカリした。
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