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二人がそんなどうでもいい、言い争いをしていると、洗い物を終えていたリオンが現れた。
「はいはい、そこまで。まったく、面白いまでに見せつけてくれますね。羨ましい事この上ない」
額に手を置き、頭を左右に振りながらそう言って、二人を茶化す。
「誰がこんな女……」
「誰がこんな奴……」
二人の言葉が思い切り言葉が重なる。
そして、気恥ずかしくなったのか赤くなってうつむく。
「夫婦漫才の最中でしょうが、ここで時間です。ファイ、エチュードを弾きに行きますよ」
その言葉を聞いた瞬間に、ファイの顔から血の気が引いて真っ青になる。
先程とは全く持って対照的だ。
「おや? まさか忘れていたのですか?」
その言葉に冷や汗を浮かべながら、びくりと反応するファイ。
「ちょっと待って。一体今から何をしに行くつもり?」
カレナが二人の間に割り込んで、唐突に質問してくる。
「エチュードって確か、練習曲の事よね? 何の練習をするの?」
「ああ、ちょっとばかり隠し芸の練習にね。さ、行くぞファイ」
リオンはそう言ってファイを引きずって部屋から出て行く。
一人残されたカレナはまた誤魔化された、と苦虫をかみつぶしていた。
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