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依存すれば、弱くなるという理論もある。
だが、それは人によりけりだ。
依存するものがなければ、力を失うものも存在する。
依存することにより、力を得た者はリオンである。憎しみに依存する事によって強くなったのだから。
「相談役くらいにはなれるだろう。紅蓮の焔を扱う事は出来ずとも」
「……ここでその話をするか」
「その説明もしておらんのか。あきれ果てた奴だ」
「教える必要がないだろうが。使える訳でもない力についてなど」
「そこが馬鹿なのだ。可能性を示唆しておけば、更に高みを目指す事が出来るでは無いから」
ヘルの言葉に口をつぐむウルカヌス。
やがて溜息を吐くと、ファイに向かって説明を始める。
「いいか、お前は未だ俺の力を使う事は出来ない。理由は未だお前が弱いからだ。俺の力は使い手の魔力を多量に消費し、尚且つ肉体に多大な負担をかけるからだ」
「だけど、それは一瞬程度なら使用は可能なのでは?」
ファイは質問をウルカヌスに向けて放つ。
「それは事実可能だ。だが、その一瞬ですら、お前は使用する事は出来ない。お前はあまりに貧弱で、その一瞬ですら肉体は灰燼と化すだろうからな」
ごくり、生唾を飲み込む音が自分の耳にしっかりと聞こえてくるファイ。
それ程の破壊力と火力をもった技、好奇心と恐怖が心を支配する。
使ってみたいという好奇心と、自らの命を対価する事への恐怖。
使いたいのなら……。
「強くなる。これからもっと強く。父さんにも母さんにも負けないくらい」
ファイはまっすぐ、ウルカヌスの眼を見て宣言する。
「なら楽しみしておるぞ。これからは呼びかけにはなるべく応じる事にするから。こいつに呼び出される事はもうごめんだからな」
溜息を吐くと、ウルカヌスはそのまま刀の中へと戻っていった。
「……良かったな、小僧。これからは自由にあいつを呼び出せるぞ」
祝福ともとれる言葉をファイにかけるヘル。
「そうだな……でも未だ力不足なんだろう? なら同じことだ。俺が強くならない限りは」
「そう悲観するな。ウルカヌスを呼び出す事が出来るだけでも十分では無いか」
「戦闘が出来なければ俺にとってはすべてが同じだ。でも、ありがとさん」
ファイはそれだけ言い残して、部屋から出ていった。
酷く疲れていたように見えたその背中からは、揺らめくような気迫が溢れ出していた。
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