学生の敵

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彼の無駄なこだわりさえなければ、ファイも無駄に苦労を重ねる必要性も無いというのに。 担任からの通達に、酷く憂鬱に溜息を吐くしか出来ないファイ。 「ちなみに、テストは実技も行う予定だからな。しっかりと修練も積んでおくように、以上!」 そう、この学校の最大の特徴。 テストに魔法、及び武術などの技術的なものがあるということ。 それもこの学校から、高ギルドランク保持者を出している事の理由だ。 此方の方はファイは特に問題は無い。 何せリオンに毎日のように鍛え上げられているのだ。 これで成績を低くした方がおかしい。 どの道リオンは最低限の点数が取れるようにしておくはずだ。 だとするのなら、問題はテストだ。 実技の方をある程度抜いておかなければ、テストで点数を取る事は出来ないだろう。 文武両道と言えば聞こえはいいかもしれないが、それを行う事は実質的には無理なのだ。 もしそれを行っている人がいたとして、その人は必ずその二つのほかの何かを犠牲にしている筈だ。 時間という全ての人間に等しく訪れるものを変える事は出来ないのだから。 例えるのなら、友人関係とか。 それをしたくないファイは絶対に、文武のどちらかを犠牲にする事によって、これを完成している。 器に限界というものは確実に存在している以上、仕方のない事だと、リオンもそう言っている。 彼がその位置にいるのは、人という器を既に脱却しているから、というだけの事でしか無い。 「早く帰って勉強をしなくては……」 担任が去った教室の中、ファイは一人つぶやき、せわしなく自室へと引き上げていくのであった。
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