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溜息をひとつ吐いて、棚を閉じると買い出しに行く支度をする。
財布を取り出して、中身を確認する。
若干足りなかったので、一万程補充をしておく。
今回は買いだめしておく予定だ。
何せ、これから一週間は部屋にこもりきりになるのだ。
保存がきく食料は勿論、乾麺などすぐに作れるお手軽なものも、大量に買い込む予定なのだから。
そして、財布を片手に部屋から出ると、食品店へと向かう。
若干早足で行くのは、安値のものが既に同じ思考の持ち主に、買い占められているのではないのかという、焦りからだ。
だが、実際に見てみるとそう普段と大差はなく、いつもと変わらない景色がそこにあった。
「……何やってんだろ。まったく焦り過ぎだっつの」
自分に向けて悪態をつくファイ。
リオン様の所為でだいぶ、やられているみたいだな……。
一人気を落ち着かせるために息を吐くと、そのまま買物籠を片手に、店内へと入っていった。
まず買い込むのはカップ麺。
これがなければ話にならない。
試験勉強の友と言っても、過言では無いこの代物を買い込まなければ、何も始まらない。
適当に安くて、味が信頼できるものをかごに放り込んでいく。
実に簡単な作業だ。若干高めのものも、目には入ったものの、それは以前食べて、あまりおいしいとは言えない代物だったので、買う事は無い。
「次は、野菜か。日持ちする野菜を幾つか買っておかないと」
カップ麺が敷き詰められているかごを片手に、次は野菜コーナーへと向かう。
そこで以外、という訳ではないが、珍しくここで目にする人物に出会った。
「カレナか、珍しいなお前がここに来ているなんて」
ファイは野菜を品定めしている少女に向かって話しかける。
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