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にべもなくそう言われて、ファイは会計を済ませて寮へと帰っていった。
ファイは若干紅くなっているように見えるカレナに引きずられて。
部屋に戻ってきた二人を待ち受けていたのは、我らがサボり魔ことリオンだった。
傍らには黒猫と小さな竜がいる。
「やぁ、遅かったなファイ」
「……やぁ、じゃないですよ。一体何処から入って来たんですか」
鍵はしっかりと締めたはず。窓だって、しっかりと止めて出て来たはず。
人なんて入る隙間もなかった筈だ。
実際に今だって、扉を開ける際に鍵をあけたのだ。
違和感は全く無かった。
自分が出た後に扉から入った形跡も無い。
かといって窓から入った形跡も見当たらない。
なら何処から侵入したのだろうか。
「何処から入ったなんて、野暮な事を聞かないでくれよ。俺は普通に扉から入ったんだぜ?」
「扉をすり抜けて来たんですか?」
「俺は幽霊か?」
「似たようなもんでしょうが」
カレナがいるというのに、若干きわどい会話をしてしまう。
それほどまでに、ファイの驚きが濃かったのだろう。
今までは幽霊のように、いつの間にか背後に現れている事はよくあったが、今回のように何時の間にか部屋に入る事は止めて欲しい。
出来ない事だとは思っていない。本当に半分は幽霊のような存在である事に違いないのだから。
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