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リオンの相手は疲れたのだろう。
これから本気で受験勉強に取り組もうとした矢先に、この出来事だ。
出鼻をくじかれるのもいいところだ。
「よし、そうと決まったらヘル、カレナと一緒に料理を作ってくれ」
リオンはにんまりと笑うと、黒猫に指示を出す。
「何で私があんたの分まで……」
突っかかるカレナの耳に、口を近づける。
「せっかくチャンスを作ってやったんだ。しっかりとものにしてみせろよ」
囁く彼に、赤面するカレナ。
そもそも、このチャンスは自分が作り出したものなので、何もためらう必要性はない。
なら、こんな所でしり込みしている場合では無い。
「分かったわ、キッチン借りるわね、ファイ」
キッと瞳を尖らせ、眼光を鋭くしてファイに断わりを得てから調理を始める。
ヘルも人化し、何やら微笑みながら彼女について行った。
ロウは物珍しそうな表情で二人を眺めている。
人語を理解する幼き竜には、何故ヘルがあんな微笑みを浮かべていたのか想像もつかないだろう。
未だ恋もした事のない、この幼い竜には。
「しかし、エプロンをつけてキッチンに立つ女子を見るのは、中々に良い光景だとは思わないか?」
持参したエプロンを装備し、料理をする二人を眺めてリオンは孫にそう尋ねる。
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