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だが、ファイは特に気にした様子も無い。
「そうですか? 別に俺はなんとも思いませんけど」
「お前はこの良さが分からないのか。哀れな奴だな」
「リオン様に言われたれたくはありません」
「まぁいいさ。お前にも分かる日が来る。この新妻のような後ろ姿の良さがな」
彼の新妻、という言葉に反応してしまうファイ。
『あなた、ご飯が出来ましたよ』
現在、彼の頭の中では、カレナが自分の妻となって食事を作ってくれている妄想が、流れている。
もし自分と彼女が結婚する事になったら……。
なんて、今はかないもしない妄想を頭で浮かべるしか出来無い、自分が悲しくなる。
「ところでリオン様、カレイネル襲撃の犯人は見つかったのですか?」
話題を変えようと、ファイは自ら話を持ちかける。
だが、リオンは顔が赤くなっている事に気が付いて、笑みがこぼれてしまうのを、必死でこらえながらファイの質問に答える。
「あの事か、まだ犯人は見つかっておらんようだな。若干、何かしら嫌な予感がするのだが……」
「最近物騒ですからねぇ。こないだの誘拐事件といい、何が起きているのやら」
「あの事件も黒幕がまだ見つかっておらん。お前たちが戦った連中も、雇われの身だったらしいからな。なんともいえん」
「あの事件もそうですか。本当にいやな予感がしますね」
「如何にこの国が他の国と比べると、平和で治安がある程度安定しているとはいえ、争いごとは起こる。何せこのご時世だ。お前だって、他の国が戦争をしている事くらいは知っているだろう?」
「ええ、まぁそれなりに。しかし、リオン様の話を聞くたびに疑問に思いますね。かつては五つしか無かった国が、今では内戦やら何やらで幾つにも分断しているなんて」
「俺とて悲しいよ。俺達の国は何のために滅ぼされたのか。……もともと、連中が力を欲したのが、原因だったからな」
溜息を吐くリオン。この話をするたびに憂鬱になる彼の表情は何を思っての事か。
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