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「どうしたのファイ。なにか考えるような顔をしているけど」
カレナはファイの顔を覗き込んでそうたずねる。
その顔の近さに、赤面しそうになりつつも、平然となんでも無い体を装い答えた。
「別になんでも無いよ。お前には関係のない事だ」
若干照れ隠しにも見える、口調のとげとげしさ。
だが、その意図など分からぬカレナは、少しだけ頬を膨らませる。
「何回も言うけど、私に隠し事なんてしないでよ。別にあんたの事だから、しょうもない事なんでしょうし」
別に気にした風もないようで、溜息を吐きながら彼女は言う。
別にしょうもない、なんて事は無いのだが、彼女には知られる訳にはいかない。
一部はばれているようなものだが、これ以上ばれてしまっては、ファイの面目丸つぶれだ。
別にそれでも良いのだが。
「別にそこまでお前に秘密にしておく気は無いよ。それでも、まだ話す訳にはいかないよ。師匠の事に関してだからな」
師匠のという言葉に過剰に反応するカレナ。
最強の男の事が気になるのだろう。力を求める者として。
「ルシフェル様の秘密なの?」
「まぁ……そうなるかな? 俺とリオン様しか知らない事だから。お前に話す為には、師匠の許可が必要だからな」
「それってどんなこと? もしかして、強さの秘訣とか?」
「そんなんじゃ無いさ。もっと別の事。カレナが求めているような答えじゃないさ」
強さだとか、そんなものじゃ無い。
もっと別の、五百年前から続く物語なのだ。
「……ふぅん。ま、いいわ。それなら早く料理を食べましょ。私とヘルが腕をよりをかけて作ったんだから。残したりしたら……」
カレナから黒いオーラが漏れ出す。
「覚悟しておいてね?」
笑顔でそう言う彼女に、リオンまでもが背中に汗をかく。
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