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勿論、ファイはすでにカレナしか、瞳の中に入っていない。
たった一人の女性として。
実はファイも告白するタイミングを見計らっている。
それでも告白は出来ない。
未だそれに値する実力をつけていないから。
実際の所は、それ相応の実力はついている。それでもまだ足りないと思っているのだ。
だから、告白はしていない。
「な、なな、なんでも無いわ。はやく食べましょ」
ファイに話しかけられて、慌てて誤魔化す様に料理を口に入れていく。
「……まぁ、いいか」
ファイは一人呟くと料理を食べて行く。
リオンと使い魔は忍び笑いをしている。
しばらくそんな食事時間を過ごした。
窓から差し込む日はもうなく、変わりに美しい満月が空に浮かび、青白い光を放っている。
食事も食べ終えると、食器を洗う。
ヘルとカレナがその役を買って出ると、ファイは勉強の準備を始め、リオンはロウを膝の上に乗せて背中を優しく撫でている。
ロウは満腹になった事により、すやすやと気持良さそうに寝ている。
やはり幼い。とても、暴れていた竜とは思えないこのかわいさ。
あの馬鹿貴族も無駄な事をしたものだ。
そんな静かな時が流れる中、部屋にノック音が響いた。
「こんな時間に一体誰だ?」
ファイは一人訝しげに呟くと、ドアの方に歩いていった。
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