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肩をすくめて見せると、リオンは空のグラスをヘルに向ける。
彼女はそれにまた、酒を注いだ。
その姿はまるで、酌をする夫人のようにも見える。
だが、相手が少年の姿であるのだから、なんとも様にはならない。
その姿を未来の自分達に、思わず当てはめてしまうカレナとファイ。
「ファイはどうだ? 俺と一緒に晩酌でも」
「自分も結構です」
「つれないねぇ」
リオンは一度苦笑すると、そのまま、静かにグラスを傾け始めた。
ようやく静かになり、勉強に集中して取り組んでいた二人に、ヘルからの差し入れが与えられた。
「ほれ、差し入れじゃ。勉学に励むのも良いが程々にな」
なんとも意味深な言葉を残して、コップを二人の傍らに置いて行くヘル。
丁度、勉強に集中しすぎて、のどが渇いていた二人は息ぴったりに、コップを傾ける。
だが、これはリオンが仕組んだ罠だった。
そう、なんとも子どものいたずらのような、幼稚で単純なものだ。
「んー? なんだか……暑くない?」
カレナは顔を赤く染めて、一人そう呟く。
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