Overture

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 突然、広也が話し始めた。 「なあ、孝平」 「ん」 「コンクールで会おうな」 「おう、広也」 「お前は苦労するぞ」 「そうだな。桐谷(キリタニ)高校吹奏楽部はもっとレベルアップしないと、共星(キョウセイ)学園には勝てないしな」 「その前に、部員数を増やさないと。大編成の部で競う以外、俺は認めないぞ」 「あは、違いねえや。共星ジュニアと小編成の部で争っても何にもならない。  広也、前言撤回する。下手でもいい。必ず3年生になるまでに桐谷ブラバンを大所帯にして、共星とコンクールの同じ日に同じステージに立つ」 「俺も3年までに共星シニアに入れるように練習する」 「そんなの簡単だろ、お前なら」 「天下の共星だぞ、油断はできない」  二人は話しながら歩き出し、校門を出ていた。  学ランの第二ボタンのことはもう二人の頭から消えていた。
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