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朝日が登る頃。
俺は未だにあの庭を忘れられずに居た。
ユズキと名乗った少女には一言たりとも言わなかったが、目が合ってからすぐに俺は、ガラスで出来たドアを開こうとしたが、一向に開く気配はなかった。
守りの魔法でも掛かっているのか、全く割れる気配もない。
そして不思議な事に、そのガラスで出来た六角柱の小さな建物は、中側の風景が映らない。
「ガディロン!」
ユズキの事を考えていたら、まだまだ幼さの残る青年がやってきた。
「王子。」
日に焼けた褐色の肌。髪は黒く長い。それに合わせるように、猫のようにつり上がった目は金色に輝いていた。
「クイーンズ・ガーデンは見つかったか?」
王子は俺の隣に立ち、窓から見える朝日を眺めていた。
「見つかりそうもありませんね。」
「だろうな。」
さり気に髪紐を俺に持たせた王子は、自分の髪を指差した。
結べと、言うのか。
「…………しょせんは夢物語。そんな幻想、誰も信じちゃいないだろうに。」
無駄にサラサラした王子の髪を手櫛で纏めると、髪紐で括る。
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