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「誰も見た事ないものを信じられる奴って、バカだよ。誰か一人でも実証出来た奴が居れば信じても良かったけど。」
ふと、ユズキの顔が脳裏を掠めた。
「クイーンズ・ガーデンとは、一体なんなんですか。」
「興味でも持ったのか?」
「はい。」
王子はニヒルに笑うと、いきなり「モモが食べたい」と言ってきた。
意味がわからない。
「もう、ありませんよ。」
「知ってる。」
なら、何故言うのだろうか。
不思議だ。
「聞いた話によれば、クイーンズ・ガーデンとは、季節関係なく花々が咲き乱れ、小鳥が囀り、水も豊かで、食に困らない場所だと聞く。」
その話を聞いて、まず初めに思い浮かべてしまったのは、ユズキが大切にしている、あの庭だった。
「ま。作り話だけどな。」
「でも、」と語り続けようとする王子の顔は真剣そのもので、目が爛々と輝いていた。
「その庭を欲しいとは思わないけど、見てみたいとは思う。」
もし、そんな庭を俺がつい昨日見たとこの年若い王子に言えば、どういう反応をするだろうか。
怒る?
それとも「冗談だろ」と言って笑い飛ばすだろうか。
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